水稲の育苗作業は何かと手間暇がかかりますが、お困りの方は作業の手間を省力化できる栽培方法として「プール育苗」がおすすめです。
プール育苗は元気な水稲を均一に育てられるというメリットがあるだけでなく、他にもさまざまなメリットがあります。
そこで今回は、水稲のプール育苗について以下のことがわかる内容になっています。
- プール育苗とは?水稲に取り入れるメリット・デメリット
- ビニールハウスと露地のプール育苗は何が違うの?
- プール育苗の始め方とコツ
- プール育苗の管理方法
- プール育苗の失敗から学ぶ対策
元気な水稲を作るためにプール育苗を検討している方は、ぜひ最後まで読んでみてくださいね!
プール育苗とは?水稲に取り入れるメリット・デメリット
プール育苗とは稲作の育苗方法のひとつで、ビニールなどで簡易的なプールを作り、そこに苗箱を並べて、水を張って栽培を行います。
プール育苗はさまざまなメリットがある栽培方法で、なによりも均一に元気な水稲を育てることができます。
プール育苗のメリット
- かん水作業の省力化
- 換気作業の軽減
- 病害発生リスクの低減
- 均一に元気な苗が育つ
- 床土の量を節約できる
- 追肥作業が簡単
水稲のプール育苗では、上記のようにさまざまなメリットがあります。
大きなメリットが、一番始めに紹介した「かん水作業の省力化」です。
一般的な育苗方法では、毎日同じ時間にかん水を行う必要がありますが、プール育苗では水が減ってきたときなど必要に応じて水を入れるだけ。
水を入れる時間帯にも制限がないので、日中は別の仕事をしているという方におすすめの育苗方法です。
これまでの育苗方法とは違う点として、換気作業を軽減できるというメリットもあります。
これまでのビニールハウスを用いた育苗方法では、温度管理のために夕方になればサイドのビニールを閉めて、朝になったら開ける作業が必要でした。
しかしプール育苗なら最低気温が4℃を下回らなければ、夜間もサイドを開けたままにしても問題ありません。
かん水作業後は、カビや細菌による病害やムレ苗などが発生しにくいのも嬉しいメリットですね。
プール育苗は病害発生リスクが低く、底面給水なので全体の苗が均一に育つのも大きな特徴です。
これまでの育苗方法では、保水性を持たせるために床土を2cm程度にする必要がありましたが、プール育苗では床土を1cm程度まで減らすことが可能です。
プール育苗では液体肥料を溶かした水をジョウロに入れて苗の上から散布する必要がなく、プールに肥料を入れることで全体の追肥を行うことができます。
プール育苗のデメリット
- プール設置場所の均平作業が大変…
- 外気温の影響を受けやすい…
- 無加温出芽が失敗のリスクもある…
プール育苗はビニールハウス内で作業を行うので機械が入りづらく、基本的には人の手によって作業を行います。
そのため生産者さんによっては労力が負担になってしまうこともあります。
また、気温に応じて育苗日数が変動するので、通常よりも日数が必要になることもあります。
最後に、プール育苗では早めに種をまくことで無加温でも栽培することができる反面、失敗してしまうリスクも伴います。すでに育苗器などの加温設備をお持ちであれば、加温器を使用して出芽したほうが安心です。
ビニールハウスと露地のプール育苗の違い
水稲の作付け規模拡大に伴って、ビニールハウスが不足するなどの理由から露地でプール育苗を行う方もいます。
露地プール育苗とは
その名の通り、露地プール育苗は「露地」で育苗する栽培方法です。
ほ場などに農業用ポリシートなどで水をためて、保温効果のあるべたかけ資材をかけたまま田植えまで育苗管理します。
露地プール育苗は早期栽培に対応できるということの他に、ビニールハウスが不要というメリットがあります。
露地プール育苗の注意点
● 冠水しない環境を整える ● 苗ヤケに気をつける ● 防風・防鳥対策を行う
露地でプール育苗を行う場合は、ビニールハウス内のプール育苗と比べて外気温の影響をダイレクトに受けやすいので、設置場所は日当たりが良く、風当たりが弱い、冠水しない場所を選びます。
豪雨による冠水リスクを減らすために、排水対策を考えましょう。
ビニールハウス内と違って露地の場合、天候や気温による影響が大きいため、出芽で失敗するリスクが高いので、露地プール育苗の場合は無加温ではなく加温出芽させた方が安心です。
出芽させた苗をプール内に並べたら、シルバーポリフィルム(シルバーポリトウ)と低発砲ポリエチレン系(ミラシート)や不織布(ラブシート)で2重に被覆するのが一般的ですが、この場合、晴天で高温になると苗ヤケを起こすリスクがあります。
対処法として、苗ヤケを防ぐ高温対策フィルム(ハイホワイトシルバーなど)と保温性に優れるシルバーポリフィルムを、必要に応じて使い分けると良いでしょう。
被覆中に雨水がたまってしまうと、天候回復後にレンズ効果(たまった雨水がレンズの役目をはたし、太陽光が収束されてしまう)で温度が上昇するので、たまった水は放置せず取り除くようにします。
最後に露地プール育苗は屋外で育苗する方法なので、防風と防鳥対策も必要になります。
防風対策としては、プール用のシートや被覆資材は枠に固定するようにして、重しを乗せます。
防鳥対策は、ネット上のポリエチレン不織布をべた掛けするか、防鳥網を設置するようにしましょう。
水稲のプール育苗の始め方は?おすすめのプール育苗資材・水位・温度・時期・を解説
プール育苗は、置き床を水平にしてからビニールシートを敷いて、水をためられるプールを作ってから播種した育苗箱、あるいは出芽した育苗箱を並べて管理します。
ここからは、プール育苗に必要な置き床の作り方やプール枠の設置方法について、ポイントやコツを交えながら解説していきます。
1.水平な置き床を作る
プール育苗の地面は、苗箱以上の高低差があると乾燥しすぎてしまったり、水没してしまったりして苗の生育が変動してしまうので、水深差が3cm以内になるよう均一に整えていきます。
土を均一にするときは、石や土の塊などを取り除いていき、置き床を水平にして、凹んでいる部分には土を足すか、もみ殻などで高さを調節してもいいでしょう。
置き床を水平にするには、目視や感覚だけではどうしてもズレが生じてしまうので、水平を音で確認できる電子水もり管や、レーザー照射で水平だしができるレーザー水準器を活用すると確実です。
2.枠を組む
水深を5〜7cmくらいにできるよう、高さ10cm程度の枠を作っていきます。
枠の材料は角材やヌキ板、C型軽量鉄骨、太い塩ビパイプなど身近にあるものを活用すればコストを抑えることができます。
しかし,プール育苗では水を張る関係上かなりの水圧がかかるので、枠が動いたり曲がったりしないようにしっかりと固定しなければいけません。
水圧が心配な方は、プール育苗専用の枠板を活用すると便利で簡単です。
専用の枠は丈夫なプラスチック製などでできており、製品によっては枠を立てて杭を刺すだけで簡単にプール枠を作ることができます。
3.ビニール製のシートを敷く
プール枠を設置したら、最後にシートを敷いていきます。
シートは二重にすることで穴が開いてしまうのを防ぐことができます。
下に敷くシートは使い古しのもので構わないので、防草シートや黒マルチシート、ブルーシートなど雑草が生えないよう遮光できるシートにしましょう。
遮光できるシートが無い場合は、ハウスで使用したPOや農ビなどの透明なフィルムを下に敷いて、上に敷くシートを遮光性のあるものにしても大丈夫です。
上に敷くシートはポリフィルムやビニール製がおすすめで、厚さは0.1mm以上が適切です。
プール育苗専用のシートとして販売されているものには遮光タイプもあり、薄くて軽量で耐久性に優れたいるため不安な方は専用シートを選ぶのもおすすめです。
シートは並べた苗箱よりも50〜80cm余るように設置することで、枠にもしっかりと固定でき水漏れを防ぐことができます。
水稲プール育苗の管理方法
プール育苗する際の環境が整ったら、いよいよ管理作業に入ります
プール育苗では6つのステップにわかれて管理を行うので、それぞれのポイントやコツをしっかりおさえて管理していきましょう。
プール苗は根絡みが良いので、苗箱からはがしにくくなることがよくあります。
そのためプール育苗の苗箱は、底穴が大きいものを使うときは必ず敷紙などを使います。
ただし、根が貫通しにくいプール育苗専用箱や根が外に出にくいダイヤカット育苗箱などを使用する場合は、敷紙不要です。プール育苗の際はこれらの育苗箱を使うことをおすすめします。
プール育苗専用箱は、上部に切り込みが入っているものがあります。切り込みが入ることで箱の中に水が入りやすく、育苗箱の底土量を減らした場合でも給水時に箱の浮き上がりを防ぐことができます。
プール育苗では、苗は稚苗〜中苗が適していて、草丈は長くなるほど活着力が低下してしまいます。
そのため苗の種類に関わらず、10〜12cm前後に仕上げるようにしましょう。
使用する倍土は、通常の育苗と同じものでかまいません。
プール育苗では床土の量を1cmまで少なくすることが可能ですが、床土の量を減らした分、肥料の量も減ることになるので、早めに追肥(おおむね播種10日目頃)していきます。
プール置き床へ育苗箱を設置していきます。
播種直後に育苗箱を運ぶ際は、箱を傾けないように注意しましょう。
特に一輪車等で育苗箱を運ぶ際、積み下ろしの作業時に傾いてしまうと加湿障害が起こりやすくなるため注意が必要です。
また育苗箱をビニールの上に並べるときは、ビニールシートを傷つけないようにします。
(シートを傷つけてしまうと、水漏れの原因となってしまいます。)
かん水した際プール内で水がしっかりと回るように、枠と育苗箱の間に5cm程度隙間を開けて並べるようにしましょう。
無加温出芽の場合、育苗箱を並べた後、出芽するまで被覆材でしっかりと覆い密閉状態にして、苗箱の床土が乾燥しないようにすることが重要です。
その際、プールの枠の上から被覆するのではなく、枠の内側で被覆し苗箱を密閉するようにしましょう。
枠の上から覆ってしまうと、苗箱と被覆材の間に空間ができてしまい内部温度が上昇して高温障害による発芽不良を引き起こす恐れがあるためです。
プールへのかん水開始は、無加温平置き方法の場合、苗の1葉が展開して2葉が出始める頃が基本です。
出芽揃いが悪い場合は、さらに日数をかけて湛水作業を遅らせるようにしましょう。
加温出芽方法では、出芽が完了したらシートで被覆して緑化させます。
水かけを一切省略化するために被覆資材をはがしてすぐにかん水する方法もありますが、この場合、出芽が遅れた苗があると水没してしまい出芽不良や根張りが悪くなる原因になってしまします。そのため早期にかん水するなら、浸種や催芽を丁寧に行い出芽をそろえることが大切です。
かん水作業では、プールの水深が苗箱の上1〜2cmを基本に水を張っていきます。
このようにかん水することで稲の根元を保温することができます。さらに床上がかん水していることでカビなどの病気発生リスク軽減にもつながります。
水位が苗箱よりも低い底面給水のような状態になっている場合は、水の保温効果と病気の発生抑制効果ともに期待できなくなるので、水が少なくなったら足します。
また、ビニールハウスを開放していると温度が下がりすぎてしまい、生育が悪くなってしまう場合があるので注意しましょう。
かん水作業を終えたら、ビニールハウスのサイドを昼夜開放して換気を行いましょう。
夜間でも水で根元が保温されるので、通常の育苗に比べて苗丈が伸びやすくなるので注意します。
しかし翌朝の最低気温が4℃を下回る場合は、ビニールハウスのサイドを閉めて、水深を苗丈の半分ぐらいまで上げることで保温するようにします。
一方で気温が高くなり、ビニールハウス内の温度が30℃以上になる場合は、プールの水を交換するようにしましょう。
プール育苗の場合、苗箱が水に浸かっている関係上かなり重くなるため、田植えの2〜3日前には落水しておくことで苗箱を軽くすることができます。
しかしプール苗は通常の育苗と比べて乾燥に弱いので、田植え当日は團場で長時間放置して萎れさせないように水やりを行うなど注意しましょう。
プール育苗おすすめ資材
プール育苗の準備から管理までの流れを説明してきましたが、ここでは必要な資材を一覧でご紹介したいと思います。
必ず必要というわけではありませんが、これらの資材を活用することで省力化や効率化が図れます。
ぜひ参考にしてみてください。
置き床水平・整地用途資材
STS レーザーレベル OL-3 レーザー用エレベーター三脚付
・水平・垂直(通り芯)・おおがね(90度)と自由自在に墨出しOKです。
・付属の受光器を使って最大半径120m検出可能です。
・回転を止めてポイントレーザーとしても使用可能です。
・バックライト機能付で暗い場所でも気泡管がはっきり見えます。
・専用ケースの中に受光器・三脚を標準セットしています。
ZIRCON ジルコン 電子水もり管 WL50
- 長距離やコーナー周りでの水準測定が一人でも簡単に行えます。
- 本体を測定の基準になる側に設置し、あとはそこからホースを測定側に持って行くだけ。
- 測定側のホースを下から上に上げて本体のブザーが鳴り始めた地点が水準点となります。
アルミ整地板
- 水田の土ならし、代掻き、畑の整地等に便利でおすすめです。
- アルミ製なので軽くて使いやすい商品です。
育苗箱・播種関連資材
稚苗用育苗箱TH (ダイヤカット育苗箱)
- 根離れの良い稚苗用の育苗箱です。
- 底面のダイヤカットにより毛根が絡み合いしっかりした苗が出来上がります。下敷紙は不要です。
育苗箱下敷き紙 クラパピー 100枚入
- 腐食しにくいので繰り返し数年使用できます。
- 根を通さず、張りのよい健苗ができます。
- 置床の影響が少なく野菜・花卉等の根の弱い作物にも適し、健苗ができます。
育苗箱下敷き紙 カルネッコ 100枚入
- 育苗箱用の下敷き紙です。
- 裏面と表面を間違えないように絵が入っています。
プールの枠作りに必要な資材
プール育苗ユニット TKプレート(枠板) 1m
- プール育苗を行う際の枠板です。
- 樹脂製なので、木製のように腐るなどの劣化がありません。
- 別売りのフレームにはめ込んでピンで固定するだけで、簡単にプールを設置することができます。
プール育苗ユニット TKフレーム 1m
- プール育苗を行う際の枠板を支えるフレームです。
- 樹脂製なので、木製のように腐るなどの劣化がありません。
- 別売りの枠板をはめ込んでピンで固定するだけで、簡単にプールを設置することができます。
プール育苗ユニット TKシートパッカー 20cm
- プール枠板にプール育苗用シートを固定するためのパッカーです。
- 樹脂製なので、木製のように腐るなどの劣化がありません。
- 20cmと幅広なので、シートを枠板にしっかりと固定できます。
プール育苗ユニット TKピン 20cm
- プール枠板を地面に固定するためのピンです。
- シートパッカーの上から抑えることで、枠板とシートの両方を固定できます。
サンポリ プール育苗用枠板 楽育
- 連結構造なので、繋げて上から杭で固定するだけ!どなたでも簡単に設置ができます。
- 樹脂なので、腐食せずに耐久性抜群!何度も使えて経済的です。
サンポリ プール育苗枠板 楽育用杭 長さ20cm φ4mm
- プール枠板を地面に固定するためのピンです。
被覆資材(シルバーポリ系、不織布系、高温対策系)
東罐興産 育苗用シルバーポリトウ #80
(厚み)0.05mm×(幅)270cm×(長さ)50m
- 無加温で育苗できます。
- かん水作業を減らせます。
- 被覆内面の高温化を防ぎ、保水性が良く、水稲育苗・接木栽培に適しています。
- 幅210cm~300cmまでご用意しております。
ピアレスフィルム 内張り用 TSタイプ 厚み0.12mm オーダーカット加工商品
- ベタ掛け被覆して、保温、保湿し、発芽させる省力的な無加温出芽に最適なフィルムです。
- 高温化を防ぎ、被覆内からの放熱を発芽、育苗適温に保ちます。
- 適度な微光を透過させるため、根伸び優先で徒長のない健全な発芽になります。
- 水蒸気バリア性に優れているので、播種時の初期かん水だけで、被覆期間中はかん水作業が省力することが出来ます。
ユニチカ ラブシート 20307WTD
- 発芽が一定になり、芽がそろいます。
- 適度な遮光で、白化現象が防げます。
- 適度な通気で、高温多湿、乾燥状態に陥ることなく、葉焼けからも保護します。
- 軽くて強い繊維だから、取り扱いが手軽です。
イワタニ 高反射育苗用シート ハイホワイトシルバー
- 保温と反射の相反する効果を両立。
- ハイホワイト(白色面)の高い反射効果で、高温障害、苗焼けを防止します。
- シルバー(裏面)の保温・断熱効果で適度な温度を維持します。 芽出しから緑化まで使用可能です。
- 適度な光線(可視光線透過率10%)を通し、白化現象を起こしません。
- 0.05mm厚のポリエチレン製品のため、作業性・耐久性が優れています。
東罐興産 高温対策フィルム トーカン ほなみ #80
- シルバーラブでは苗焼けを起こすような高温時でも苗焼けしにくい。
- 資材が熱くならないので不織布は不要です。
- 適度に透光量があるので緑化までOK。加温出芽後の緑化にも最適です。
- 耐久性があり、かさばらず、洗い易い。
- 水分の蒸散が少なく、床土に適度な水分を保持します。
プール育苗用シート
おてんとさんオリジナル プール育苗シート (黒)
- 多層構造のPOフィルムでコストパフォーマンスが高いシートです。
- 耐候剤入りなので、強度に優れます。
- 黒色の遮光効果により雑草の発生が抑制できます。
- 幅も230cm~360cmまでご用意しております。
数量に限りがあるため、お早めのご検討をおすすめします。
東京インキ プール育苗専用シート TKプールシート
- 多層構造製膜により耐候性があり優れた強度があります。
- 黒色の遮光効果により雑草の発生が抑制できます。
- 従来の塩化ビニールに比べ比重が軽いため、展張作業が軽減されます。
- 中接無しで広幅規格が充実しています。(幅270cm~460cm)
東罐興産 プール育苗シート トーカンリザボア オーダーカット加工商品
- 0.15mm厚の多層構造で強度に優れています。
- 耐寒性に優れています。
- 表裏がシルバー・黒で遮光率が高く、雑草繁茂防止効果があります。
- 柔らかいので密着性が良く、隙間が出来にくいので適度な気密性があります。
- メーカーでご希望の長さにオーダー加工する商品のため、無駄がなく経済的です。
タキロン 育苗プールシート ぷーるっこ
- 枠にヌキ板などを使わずホースで黒チューブに水を注水するだけの簡単作業でプールが出来る枠とシートが一体化した育苗プールシートです。
- サイドの黒チューブによる保温効果によって、苗が平均的に育ち良い苗ができます。
- 毎晩のかん水作業の手間が省けます。
- シートはチューブ状の2枚重ねになっている為、丈夫で軽く女性や高齢者の方にも扱いやすくなっています。
- 幅違いで4タイプをご用意しています。
プール育苗の失敗事例と対策は?元気な水稲を育てよう!
一言にプール育苗と言っても、地域性だったり農家さんによってさまざまな方法で栽培されています。
そのためいろんな障害に悩まされる方も多く、しっかりとした対策が求められます。
無加温出芽方式の失敗事例
ハウス全体の育苗箱が出芽不良になってしまった…
この場合、原因が4つ考えられます。
- 被覆資材の密閉不良
- 加湿
- ハウス内の高温
- カビの発生
最初の被覆資材の密閉不良についてですが、育苗箱をシルバーポリトウなどで被覆する際にしっかり密閉できていないと、隙間から風が入って過乾燥になってしまったり、育苗箱と被覆材の間に空間あると高温障害がおきてしまう恐れがあります。
対策として角材などでシートの端に重しを付けて隙間をできないようにしたり、上にかけた被覆材の端は育苗箱の下に巻き込むように入れることで苗箱と被覆材を密着させることができます。
2つ目の加湿が原因の場合、苗の出芽前にプール内に水を入れてしまうと加湿状態に陥ってしまいます。
出芽前にプールに水を入れないようにするのが原則で、水をかけるのは「どうしても水をかける必要があるとき」の非常手段ということを覚えておきましょう。
3つ目は、ビニールハウス内が高温になることで出芽不良に陥ることもあります。
ビニールハウス内は35℃を超えないように、サイドを開けて換気をしっかりと行うことが大切です。
最後に、カビが発生することでも発芽不良が起こります。
被覆資材を取り除いたときに、苗に白い粉が付着していたらカビの発生を疑いましょう。
カビを避けるためには、播種前に育苗箱や被覆資材をしっかりと洗う・消毒などを行うことが大切です。
必要に応じて、播種前にカビ対策の薬剤を散布したり、床土に水田土や山土を使用している場合は土壌消毒を行ったりしましょう。
水管理の失敗事例
「ビニールシートに穴が開いてしまい、プールに入れた水が半日でなくなった…」
この場合でも、育苗箱の床土の上まで水が溜まっていて、プールの水が半日でなくなったとしても、育苗箱がビニールの上に直接設置されていれば、床土には相当の水が含まれています。
そのため、気象条件によっては5日程度灌水しなくても良いケースもあるので、プールに毎日かん水するのをやめて、床土が乾燥したらプールに水を入れる方法に切り替えたほうがいいでしょう。
しかしこの方法は、湛水による病害防除効果が期待できなくなるので、カビやムレ苗の発生に気をつける必要があります。
温度管理の失敗事例
「慣行育苗のように温度管理を行ったら、苗が徒長してしまった…」
この場合、「高温」と「夜間の水温」の2つの原因が考えられます。
まず慣行育苗のように、朝方にビニールハウスのサイドを閉めた状態にすると、晴れた日の朝8時頃にはビニールハウス内の温度は40℃以上になり、さらに水分が豊富なので徒長しやすくなります。
次にプール育苗では、夜間の温度は外気温より高く推移していくので、慣行育苗と比べると苗が伸びやすくなります。
そのためプールに水を入れるようになったら、夜間もビニールハウスのサイドを開けておいたほうがよいでしょう。
しかし最低気温が低い場合に夕方にサイドを閉めたときは、翌朝できるだけ早い時間に換気を行いましょう。
また、夜間にビニールハウスのサイドを開放していて、早朝に確認すると外に霜が降りていた場合は、ビニールハウス内への影響はあまりないと考えられます。
しかし念のために、できるだけ早い時間帯に苗にかん水を行い、霜を水で解かします。
事前に霜注意報を確認できた場合や、最低気温が4℃を下回る場合は、夕方にプールの水をたっぷりにしておき、サイドを閉めておくといいでしょう。
追肥の失敗事例
「育苗初期に追肥したら、プール内の水に藻が発生した…」
藻が発生するのは、液肥などリン酸の成分を含む肥料を使用ことが原因として考えられます。
藻が発生しても苗の生育にはあまり影響しませんが、発生量が多い場合はプールの水を抜いて藻を洗い流しましょう。
「プール内に肥料養液を流し込んだら、苗が黄色く変色した…」
追肥に硫安や尿素を使う場合は、1,000倍程度、液肥では500倍程度の肥料養液を作り、それをプール内に流し込んでいきます。
しかし蒸発などでプール内の水が減ると、液体溶液の濃度が濃くなっていくので、根が肥やけをおこします。
肥料の濃度障害は、硫安が最も起きやすく、次に尿素、そして液肥の順番に起こります。
そのため追肥した養液が半分になったら水を深く入れるか、追肥後3日程度でプール内の養液を捨てて新しい水を入れることで濃度障害を避けることができます。
田植え時の失敗事例
「苗が徒長してしまい、移植した苗が転んでしまった…」
移植した苗が転んでしまうと、水田に水を入れたときに水没してしまったり、葉が水に浮かんだりして活着が悪くなります。
徒長してしまった場合は、移植前に育苗箱を並べて刈払機などで、苗の草丈を10〜12cm程度に刈り取ってから移植しましょう。
プール育苗で農薬施用する際の注意点
プール育苗の場合、播種時に育苗箱施用された薬剤が水が豊富な状態になるため、通常の育苗時よりも薬剤の溶出が速くなる恐れがあります。
特にプール内の水温が高い場合は、急激に薬剤の溶出が進み、濃度障害の薬害が出る恐れがあります。農薬の濃度障害が起きてしまった場合、残念ながら回復させる手段がないので注意が必要です。
また、床土に混和する成長調整剤や本田分の肥料を混和させる場合にも、先述の農薬と同様の心配があるので気を付けましょう。
まとめ
プール育苗は、基本的にはビニールハウスの中にプールを作って、水稲の苗を育てていく栽培方法です。
プールを作って育苗を行うので、散水ノズルなどで水やりを行う必要がなく、育苗管理の大幅な省力化が期待できます。
また露地にプールを作って育苗する方法もあります。
露地プール育苗の場合は、天候や外気温の影響を受けやすいので注意をする他に、防風・防鳥対策も必要です。
プール育苗ではご紹介したように、プールの作り方や管理方法などにコツやポイントがあるので、しっかり把握しておきましょう。
またプール育苗は地域や農家さんごとにさまざまな方法で育苗されているので、お困り事も多種多様です。
もしあなたがプール育苗で「失敗したかな…」と感じたら、今回ご紹介した失敗事例と原因を参考に、対策を行ってみてくださいね。